建築会社と戦う男の物語

「訴訟額2億1000万!?新築マンション投資失敗ブログ」 を小説に書き換えた、サブブログです。

私は渡辺拓也と申します。
脱サラをし、
不動産投資に取り組みました。

しかし、人生の全てをかけた新築マンションを
建ててくれた建築会社と、現在裁判で係争中。
マンションも手に入れていません。

そんな私の失敗談記録を公開した
「訴訟額2億1000万!?新築マンション投資失敗ブログ」
を開始したのが2021年5月でした。

その中味をわかりやすく
ノンフィクション小説として書き換えたのが
このブログです。
こちらのブログもよろしくお願いします★

寺田専門委員、是永専門委員も突っ込んでくれた。

「タイル工事でも、吹きつけがなくなっているのに
 その分の金額が減らされていない。

 『追加変更』を主張するのであれば、
 減った分も明細を出さないと話になりません。
 この建設工事は、追加というより、仕様変更ですよね。
 増えたものもあれば、減ったものもある。
 それを一覧にしないとだめなんですよ」

「増えたのだけ書いて、
 減った工事を書いていないのは2重取りですよ」

田中弁護士は、頭をかきながら
説明した。

「一応、工事一覧表には
『減』の項目を入れています」

裁判長の目が光った。

「書類上は変更ないのに
 請求するとき、減らしてるということですか?
 そのことを書類に書いていないのは、困りますね」

田中弁護士は、あわてて説明をする。

「出精値引きをしました。
 どんどん追加されていくと
 大変な金額になるので、
 現場でそのへんを考えながら苦労しているのです。
 本当はもっと渡辺氏に請求しないといけないのに
 それをなんとか抑えて、この金額にしているんですよ」

※出精値引きとは
経費の見積を出した側が、
自らの努力によって値引きしたことを表す項目のこと。

例えば、100万円の予算に対して
見積額が110万となったときに
値引きの明細を出さずに、
『出精値引き10万』として数字を丸める場合などにも用いるものである。

「出精値引きですか?」

裁判長は少し驚いたようだった。




2人の専門委員に追及されても
田中弁護士は、ゴーイングマイウェイ。

「バルコニーについては、
 本来とてもこんな安い金額ではできないんです。
 特別価格で見積もったんですよ。
 だから小さくしたら、
 手間とか型抜きとかの余計な手数がかかることになったので、
 本来かかるはずの価格にもどしたわけです」

寺田専門委員は、数字を見ながら冷静に言った。

「ここに書かれている金額は、
 相場より高い気がしますよ」

「そりゃそうでしょう。特注ですからね」

「特注としても、高く感じますね」

田中弁護士は、追及されると
すぐ逃げ道をつくる。

「そんな相場の話をされても、
 弁護士ごときにわかるはずありません。
 担当者に来てもらわないと
 価格の話は、私にはわかりませんわ」

裁判長は、のらりくらりと返答する田中弁護士を
たしなめようとするが、その効果はあまりみられない。

「担当者に聞いて、話を詰めて行くにしても
 田中先生は、弁護士として
 もう少しわかりやすく整理してください。
 話がややこしくて、争点が整理できません」

金額の矛盾を質問されたが、
田中弁護士はそれには答えようとしなかった。

「あーごめんなさいね。
 これの説明は現場担当者を連れてきて
 させた方がいいと思いますね。
 私はわかってないんです」

寺田専門委員は、
田中弁護士がすっと答えると考えていなかったようで
引き下がらなかった。

「まあまあ、そう言わないで
 私の話を最後まで聞いて下さい。

 元は四角いベランダの形がかわり、
 小さくなっているから費用は減額されているはずです。

 追加ばかり主張しないで、
 小さくしたところ、省いたところは
 金額を引いていかないといけないのではありませんか?」

田中弁護士は、食いつかれても動じない。

「寺田さんがおっしゃっている、机上の論理はわかりますよ。
 でも、そこの部分は
 現場担当者に聞かないと、私にはわかりませんねぇ」

田中弁護士が答えようとしないので
もうひとりの専門委員の是永1級建築士も追求した。

「普通は、増えた分も減った分も書くのです。
 この書類、増えたところしか書いていません」



なぜ田中弁護士が出した
おまかせ建設会社が主張する追加工事の書類は
検討の際必要な「最初の金額」「最初の図面」が
あやふやなのか?

「早く仮契約書の金額を示して下さい」

田中弁護士は、嬉しそうに一つの書類を掲げた。

「お~見つかりました!甲61号証でした」

なくし物を見つけたリアクションだった。
裁判長は、そのリアクションは見ないふりをして
今までの確認をした。

「では、それに甲48号証の2枚目がプラスされたものが金額の前提で、
仕様は、甲50号証ということですね?」

「はい、仕様は甲50号証です」


なぜそんなに書類を分ける必要があるのかと不思議だが、
分けるのなら分けるで、
その内容を熟知し、整理し、
すぐ提示できるようにするのが
弁護士の役目ではないのか?

1級建築士寺田専門委員が質問した。

「田中弁護士に質問します。
 おまかせ建設会社が請求されているのは
 5000万円強となっていますが、
 2800万円が追加の分ですよね?
 明細を見ていくと、どうも数字が合わないんですが
 どうなっているのですか?」

私に言い返せないと思ったと思われる裁判長は、
再び中弁護士の方を向いて質問した。

「渡辺さんは金額を聞いていますが、
 それは、どこに書いてありますか?」

「聞いているのって、元の契約の金額のことですよね? 
 それは48号証ですね」

「48号証は、見積書ではありません。
 金額を書いている書類です」

田中弁護士は怪訝な顔をして、裁判長に質問する。

「えっと、金額?
 追加工事の金額を書いている書類ですか?」

・・・・・今、何の話をしているのかわかっていないのか?
目を開けて着席しているが
寝ていたのだろうか?
今は「追加工事があったのか、なかったのか」確認中で、
そのための元になる最初の金額を確認しているのだ、
と、私は、いらだちを感じた。
むろん、田中弁護士には伝わるわけはないが。

「今は追加工事の金額など確認していません。
 工事の元になる金額です。
 そこからどれだけの追加があったのか
 確認するためです。
 つまり、仮契約の金額を書いてある書類をお訊ねしました」

田中弁護士は机上の書類を探し始める。

「48号証の2枚目、3枚目・・・」

裁判長は、ためいきをついた。

「いや、それは見積書ではありませんとさっきも言いました。
 見積書を見てください」

「見積書??」

「見積書はあったでしょう?」

「えっと、仮契約書の見積書は?
 えっと、どこかな?」

と、また田中弁護士は自分の証拠書類をまさぐった。


「そんなに探さないと出てこないんですか?
 すぐに答えて欲しいですけど!」

コントをみているようだが、ここは裁判所である。

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