裁判長は、さっきまでの失礼な発言はなかったかのように
話題を変えた。
話題を変えた。
「渡辺さんは
法律的なアドバイスを弁護士さんと相談しているが
法律的なアドバイスを弁護士さんと相談しているが
主張していることの中味は
設計士からの方が多いということですね」
「はい、そうです。」
さすがに寺田委員はバツが悪いのか黙ってしまい、
是永専門委員が替わって発言し始めた。
是永専門委員が替わって発言し始めた。
「一番大きいのは、
ご契約の内容がスタートからずれがあることですね。
契約書に
“ハイセンスデザイナー事務所によるデザインの追加金額は別途”
と書かれています。
この書き方だと、
おまかせ建設会社が
ハイセンスデザイナー事務所がデザインを追加する
ということを当初から認識しているということです。
ですがおまかせ建設会社は、
ですがおまかせ建設会社は、
“当初は、ハイセンスデザイナー事務所のデザインで
見積もりをしたのではなく
おまかせ建設会社の標準仕様・標準図面で見積もりを出した“
と言っています。
ハイセンスデザイナー事務所の指示するデザインのマンションの見積もりか
おまかせ建設会社の標準仕様・標準図面で見積もりか
見積もりの出し方のスタートが違うんですよ。
そういう、シンプルな話なんです。
ハイセンスデザイナー事務所のデザインを取り入れている
スケッチとかは出てるんですけど、
そういった資料だけでは、
おまかせ建設会社の主張をくつがえすには弱いです。
もう少ししっかりとした、
“ハイセンスデザイナー事務所がデザインをすることを前提に契約する”
という証拠になるようなものはないんですか?」
私は首を横に振った。
「私はさまざまな書類をもらっていないので
そういったしっかりした書類は
おまかせ建設会社が持っていると思うのです。
立証責任はおまかせ建設会社にあると思います」
それに対して、是永専門委員は、私を力づけるように言った。
「だからそれに対抗するためにですよ。
当時の議事録等あれば、
それを証拠におまかせ建設会社に追求することができます。
こちらとしても、お役に立ちたいんです」
「そういう資料はないです」
「メモでもかまわないですよ」
「議事録やメモはないです。
おまかせ建設会社が(標準仕様)と裁判では言ってますが、
それも当初からないんです。
私は聞いていないし
未だおまかせ建設会社が私のマンションを
(標準仕様で建てる)ことになっていたという立証もできていないんです」
是永専門委員は慰めるように優しく言った。
「渡辺さんが悪いと言っているのではないんです。
立証できないことを責めているわけではありません」
「もちろんそういうはっきりした証拠があれば
ここまで揉めることは、なかったんだと思います。
ないから、食い違いをはっきり説明できないのです。
『それが分かるように書面をください』と
別の裁判で請求しているのですが、
相手は全く応えてくれないという状況です」
「入口のところが明確にできれば、
調停委員として、正確に判断できますけどね」
黙り込んでいた寺田専門委員が話し始めた。
「先ほどおまかせ建設会社代理人の田中弁護士が
『お金を払えないから工事を止めてくれ』
と渡辺さんが言ったと言ってました。
それは事実ですか?」
「そんな事実はありません。
お金を払わないと言ったことはないです。
でも『条件をクリアしてくれないと払えない』とは言いました。
完成の一カ月前に2000万以上追加工事費として上乗せされた請求があって、
半年以上前からその2000万円の内訳が知りたい、
追加金に関して詳細を教えてほしいとお願いしています。
私が請求されているお金をお支払いする条件はそれです。
内容が納得できれば、
元々払うべき残額は、払うつもりで用意しています。
しかし、追加については、心当たりもなく
こちらとしては明細を精査して、考えたいのです。
それについては
裁判で主張を続けたので
おまかせ建設会社から
6月ごろにA4の簡単な項目だけ書かれた表だけが送られてきました。
でも、そんな簡単な書類だけでは納得できません。
その経緯も今までの裁判で書面に書いて明らかにしています。
今までの書類を見て下さい」
そこで、席を外していた田中弁護士が戻ってきた。
裁判長は、今後の予定について説明をした。
「双方から話を伺って
調停委員会として検討させていただく際には、
主に追加工事のところが話の争点になるかと思います。
次回までに立証の追加などあれば 出してください。
こちらの方で調停案を出す流れで進めさせていただきたいと思います。」
調停案は、次回、委員からの判断を聞いてから出します。
次回に調停の方向性について色々と賜って、
次回に調停の方向性について色々と賜って、
それを踏まえて委員の意見も聞くことになると思います。
双方、新たな立証を主張される予定はありますか?」
私は首を横に振った。
私は首を横に振った。
裁判長の言葉に寺田専門委員が付け足した。
「もし、新しく出す内容や書類があれば
今回が最後ということで、
漏れのないように出していただければと思います」
そして、裁判長は次の言葉で今回の裁判を締めくくった。
「今まで提出してもらっている内容と、
次回までに出すものを合わせて、
こちらから事件解決になるような提案ができればいいな、
と思っていまして、
今回のおまかせ建設会社請求の主旨は、
“追加料金を含む代金を払え”となっていますけども、
次回にお話をお聞きした上で、
そのことを検討させていただく事になります」