今後の対応に関しては
「書面で正式に伝える」ということで、話し合いは終わり
私たちは帰ることになった。

おまかせ建設会社は
駅から徒歩20分も離れている場所にあるので
帰りもタクシーを呼んだが
帰りのタクシーを待っている間も、
中山専務、山本部長はさっさとどこかに行ってしまい、
謝罪の言葉どころか、見送りすらなかった。

普通は
「本日は遠方の弊社までわざわざ足をお運び下さり
 ありがとうございました。
 どうぞ、お気をつけてお帰り下さい」
ぐらいの声をかけるのが大人の対応というか
社会人としてのマナーではないのか?

その日の夜松本コンサルタントから電話があった。

「今日はお疲れさんでした。

 内情を言うとさ、
 ほんまの追加料金は2500万円どころじゃなかったんやで。
 えらい高い金額になってしまってたんや。 

 それで私が社長に掛け合い、追加金に関して、

 『拓也くんはまだ若いし、払える金額に限度がある。
 私の連れてきた客なんやし、値引きしてくれないと困る』って
 あの後、社長に交渉したげたんやで。
 
 社長は『かかった金額は払ってもらわないとこっちも商売やから』
 と言って、値引きをしぶったけれど
 拓也くんが払える可能性のある金額の2500万円まで

 値引きをしてくれるよう交渉してあげた。

 普通こんなに値引きするなんてこと
 私の紹介じゃなかったら、とても無理やったんや。
 そういうわけで、2500万円追加というのは
 私との関係で、採算度外視で値引きしてくれた結果やから
 これ以上の値引きはできるはずがないねん。
 拓也くんが、デザインにこだわったから

 払わないといけない金額なんやで。
 追加料金は2500万円必要ということになった。
 
 そのことを後でおまかせ建設の中山専務と相談して
 『私から渡辺拓也くんに伝えて
 2500万円は拓也くんに支払ってもらいます』
 と言ったら、中山専務も了承してくれた。
 よかったな」

開いた口がふさがらなかった。
松本さんは、私が建築面での問題点を指摘したとき
「それは直接おまかせ建設会社の専務に言いなはれ」
と言ったから、この暑い中、坂井デザイナーにも
デザイナー事務所の人にも都合をつけてもらって
遠いおまかせ建設会社まで出向いてもらったのに。

今日主張した事に対する回答ももらっていないのに
なぜ追加料金のことを電話してくるのだ?
今日の話し合いのことではないのか?
第一、追加料金を支払う理由がどこにあるのか
今日は何も話し合われなかったではないか。

松本さんが私にこんな電話をしてきた意味が全くわからなかった。
話がかみあっていない。