寺田専門委員は、私の話をひとしきり聞くと
完了検査について教えてくれた。

「渡辺さんは、『本件建物の耐震性に大きな疑問がある』
 とおっしゃっていますが、
 行政完了検査の時、それがわかったら、
 検査済証は発行しませんよ。
 普通は、そんな工事認められませんからね」

是永専門委員は耐震性の説明をしてくれた。

「地震が頻発している昨今
 建物の耐震性についての審査をするようになりました。
 しかし、完了検査の時には
 それを確認することは難しいです。
 もう建物が、できてしまていますからね。
 その辺が守られているかどうかの説明は
 工事業者に聞くのです。
 工事のしかただけ聞いて、
 耐震性に問題がないかどうかは素人にはわかりませんからね」

「そうですね。
 私はたまたま工事中のところを見て
 耐震性に不安をもちました。
 そのため、おまかせ建設会社に
 『説明してほしい』とお願いしたのです。
 すると、中山社長は、説明せずに
 『買い取るから問題ないだろう』と提案してきました」

「完了検査以外に、消防署やエレベーターなど
 いろいろな検査があったと思います。
 その工事が終わるたびに
 施主が確認して捺印して各機関に出すのですが、
 その捺印はしたんですか?」

「是永さん、その問題は、もう恥ずかしすぎて消したい過去なんです。
 私が素人すぎて、勉強不足でした。
 結果をいうと、何も確認せずに捺印していると思います。
 というのは、
 今となっては、どんな書類だったか思い出せないのですが
 契約した当時に10枚ぐらい書類が送られてきて
『これらの書類は、建築に必要ですので
 全部に捺印して送り返してください』
 と言われたので、
 当時は、信用しきっていたので
 何の書類かわからずも
 10枚ほどはんこを押して、全部おまかせ建設会社に渡しました。
 その中に、完了検査までの申請書が入っていたのだと思います。
 『はんこは簡単に押したらいけない』と知っていたのに
 まさか自分が騙されるなんて思っていなかったので、
 後悔しています」

「ということは、
 何かわからないまま10枚ぐらいの書類に
 事前にはんこを押してしまったんですね。
 最後の検査までの必要書類全部であった可能性が高いということですね」

と是永委員は、アゴに手をやった。