私もお金がたっぷりあったらまちがいなく
おまかせ建設会社を訴えていたと思う。

でも、足りるはずだった資金計画から
建築の遅れとともに
余分なお金がどんどん出ていった。

とても弁護士をやとって
時間をかけて裁判をする
経済的余裕も時間の余裕もなかった。

私は一介の民間人なのである。
だから、いくら理不尽な扱いを受けても
なんとか話し合いで解決にもっていきたいと思って
可能な限りの対応をしてきたのだ。

それなのに、不誠実な対応を繰り返してきている
おまかせ建設会社の方が私を訴えるなんて!

戦いを挑むのは並大抵のことではないと感じた。

地方行政に陳情書を出したので
行政は、おまかせ建設会社のずさんな仕事に対して
動き始めてくれたのに
おまかせ建設会社が弁護士を立てて
私を訴えてきたため、
行政指導が止まってしまった。

訴えられる前に
私も、事態をできるだけ早く解決したいために
できる限りの行動は起こしていた。
いろいろな所に相談に行っていた。

どの弁護士に相談しにいっても
契約書のダメ出しを受けるだけで

 「契約書がだめだったことは、
  もう十二分にわかっている」

 「私が知りたいのは、こんな契約書だからこそ、
  私は今からどのような行動を起こしたらいいのか?
  という解決法なのだ」

と思っているのに
私の希望を叶えてくれる弁護士とは巡り会うことができず
悶々とした思いで毎日を過ごしていた。

そんなとき、
弁護士会主催の欠陥住宅相談会があったので参加した。
そこで出会ったのが
欠陥住宅問題を長年取り組んできた
一級建築士の井上元治さんだった。

井上さんは
私が一番に不満に思っていることを理解してくれた。

図面をもらっていないこと、
こちらがお願いしたデザインで建物を建ててもらっていないこと
工期がひどく遅れていること
明細のない追加料金の妥当性
ご近所さんに迷惑をかけながら工事していること
それらも全て問題であるが、
耐震に不備がある状態で
建築されている事が一番不満だった。

今まで相談しにいった弁護士さんたちは
契約書や追加料金のことしか話題にしないので
話がなかなか進まなかったのだが
井上さんは建築のプロ。
井上さんが現場を見に行ってくださることになった。

そして私はこの後
井上さんに助言を仰ぎながら
おまかせ建設会社との問題を解決するように、
行動を起こすことを決意することになる。