田中弁護士は、私の質問を聞いて
裁判長が答える前に気色ばんで話に割り込んできた。

「裁判長!今の渡辺さんの発言にはまちがいがあります。
 契約時には甲4号証という書類が存在しておりましたが
 追加工事のことは含まれていないと、
 私どもは主張しております」

裁判長は、整理した。
「おまかせ建設会社としては、
 甲4号証は契約締結時に、
 存在していたことはまちがいないけれども
 マンションは、
 おまかせ建設会社標準仕様で建てるということで
 その金額は、別途甲3号証に書いた。
 標準仕様で建てているので、本契約金額は甲3号証のもの、
 甲4号証に書かれている部分については
 追加工事となっているので
 追加工事分は、支払い義務が渡辺氏にある、という主張ですね」

私は、当然言い返した。
「おまかせ建設会社さんが提出した準備書面には
 3ページ目に
『おまかせ建設会社と渡辺拓也との間で
 本件契約を甲4号証で締結した』
 と明記されていますね。
 ですので、本工事は甲4号証という認識ですよね?」

私の発言に対し、田中弁護士は、頭を抱えてふざけた調子で
「あーごめんなさい。それは解釈違いです。
 私、日本語がへたくそなんですよ」
と言ったので、一瞬裁判所の空気が濁った。

「え?日本語がへたくそって
 そんなこと、ありますか?」

唖然とする私に対して田中弁護士は
臆することなく、持論を展開したのだった。

「追加工事と本体工事を分けて書いてまして
 追加工事一覧表を訴状に添付しているんです。
 そこに『追加工事一覧表に記載されているものは別工事であって、
 契約の条項でデザイン料は別です』
 とされているんですよね」

「そこが争点で、契約の意思解釈の問題だと思います」

私がそう言うと、裁判長は、甲4号証に関する認識を述べた。
「たしかに、渡辺さんが指摘された甲4号証の位置づけが難しい
 と私も考えておりました。
 今お二人の話を聞いてわかりましたが、
 甲4号証は、“追加工事”とおまかせ建設会社が主張している工事が
 含まれた図面なんですよね。
 それは後に、契約の対象に付加されたという主張なのですね」

私は裁判長の発言を受けて田中弁護士に質問した。
「おまかせ建設会社さん、
 甲4号証は追加工事が含まれている
 ということでよろしいんですね?」

裁判長も、同じ質問をする。
「田中弁護士、追加工事が含まれているんですね?」

田中弁護士は、胸をはって答えた。
「はい、甲4号証は追加工事が含まれた図面です。
 契約を締結する前から、施主Pのご希望で
 ハイセンスデザイナー事務所と打ち合わせをしていましたので」